二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~


「なんで助けてくれなかったんだ、家族が死んだのはお前のせいだ、そうやって詰られたこともある」

壮絶な経験に絶句する。櫂は救急科の医師だ。千咲たち救命士が搬送した傷病者の救命処置を行う彼は、どれだけ腕がいいと言われていようと救えなかった命だってあるに違いない。

けれどそれは、決して櫂のせいではない。

「もっと俺に技術があったら、あと数分だけ時間をもらえたら。そうやって悔しくてやりきれない気持ちになることもある。でもそこで挫けてしまったら、救える命が救えなくなる。だからこそ自分になにができるのかを考えて、前を向き続けるしかないんだ」

自分自身に言い聞かせるような口調だった。彼も心に傷を負いながら、それでも前に進んでいる。

千咲も、その志を持って救急救命士を目指したはずだった。それなのに⋯⋯。

「先生は、強いですね⋯⋯」

千咲は、彼のように強い心を持てそうにない。ポッキリと折れた心は罪悪感に塗れ、悲しみの中で蹲ったままだ。