「田上さんは、ただの職場の先輩ですよ? 尊敬はしてますけど、特別な感情は――」
「わかってる。カッコ悪いから言いたくなかったけど、弁当をねだるような気のおけない関係なら、牽制しておくに越したことはない」
そう言って、彼は千咲の首筋をキツく吸い上げる。
「あっ⋯⋯」
チリっとした痛みが走り、そこから熱が広がっていく。
「⋯⋯まさか、跡つけました?」
「明日、異動願を出しにいくんだろ? 見せつけてきたらいいよ」
「そんなことできるわけないじゃないですかっ」
千咲が真っ赤になって抗議すると、櫂はたまらず破顔する。
「櫂さんに、こんな子供っぽい一面があるなんて初めて知りました」
「俺も、千咲と出会って初めて知ったよ。こんな風に嫉妬する器の小さい男だったなんてガッカリした?」
そう尋ねる彼の表情は、言葉とは裏腹に自信に満ち溢れている。
「ガッカリするわけないって、わかってて聞いてますよね?」
「ははっ。それは嬉しいな」
千咲が照れつつもそう指摘すると、彼はとても嬉しそうに笑ったのだった。
Fin.



