「そうだったのか。辛かったね」
「私には両親がいなくて、祖母に育ててもらったんです。早く一人前になって恩返しをしたいって、ずっとそう思って仕事に打ち込んできました」
国家試験に合格した時も、配属される消防署が決まった時も、祖母は手を叩いて喜んでくれた。
『よく頑張ったわね』
『みんなの命を守ってくれる救命士さんになったのね。千咲は私の誇りよ』
朝は千咲のためにお弁当を作り、『いってらっしゃい』と見送ってくれた。
けれど、祖母はもうこの世にはいない。両親やきょうだいのいない千咲は、ひとりぼっちになってしまった。
「祖母は私を応援してくれていたのに、私のせいで⋯⋯」
「君のせい?」
なによりも千咲の心を抉ったのは、一番大切な人の緊急時に駆けつけられなかったことだ。



