二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~


心配性の櫂が『完治するまではここにいて』と退院後の千咲と紬を自宅に連れ帰り、その後もずっと彼の家で静養するようにと言い含められたためだ。

いくら家族になる決意を固めたとはいえ、彼の両親の許しも得ずに部屋に転がり込むわけにはいかない。

しかし、櫂は首を縦に振らなかった。

『まだ怪我が完治してないだろ。ちゃんと元気になってからでいい』
『挨拶もしてないのに、勝手に一緒に住み始めるなんてよくないです。それなら、私と紬は一旦実家に――』
『それもダメだ。千咲はすぐに無理をしそうだから。心配で仕事が手につかなくなる』
『そんな大げさな⋯⋯』

押し問答の末、櫂が電話で事情を説明することで決着がついたのだが、彼の両親が「早くふたりに会いたい」と言い出したらしい。

千咲は当たり前だと頷いた。どんな人柄かもわからない相手が息子の子供を生んでいたなんて、両親からしたら青天の霹靂だろう。さらに結婚を前提に一緒に住んでいるなど、普通の感覚なら許せるものではない。

櫂も、彼の父も多忙のため、ようやくスケジュールが合わせられたのが今日。退院してから二週間ほど経っている。いまだかつてないほど緊張していた千咲は、朝から入念に掃除をすることで心を落ち着けていた。

誠意をもって謝罪し、櫂との結婚を認めてもらうつもりでいたし、当然千咲が櫂の実家へ出向くつもりだったのに、彼が怪我を理由に両親をこちらに呼んでしまったのだ。