二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~


それに、と彼は続ける。

「兄のような脳外科医とは違って、救急医療は完璧主義では成り立たないと思ってる。限られた時間や器材の中で、最善の選択を迅速にする。それが俺たちの仕事だ。海外でしかできない経験もあるかもしれないけど、俺はこの病院で経験を積んで、この場所でひとりでも多くの患者を助けたいんだ」

彼の救急医としての矜持を見せつけられ、千咲は胸がときめくのと同時に、とんでもない羞恥に襲われていた。顔から火が出そうなほど熱く、視線が上げられない。

単なる推測と嘯きながら、櫂が海外行きを断った理由が自分たちにあると、なんの疑いも持たずに確信していた。

(とんだ思い上がりだわ⋯⋯!)

穴があったら入りたいというのは、こういう時に使うのだろう。

「⋯⋯ごめんなさい。私、とんでもなく失礼な勘違いを」
「いや、タイミング的にそう考えても仕方ないよ」

両手で顔を覆って俯いた千咲の耳に、櫂のクスッと笑った声が届く。