本当は、初めて三人で出掛けた日には、もう気持ちは傾いていた。
櫂となら、この先の人生をともに歩んでみたいと思った。
それに、彼は千咲だけでなく紬のこともとても大切に思ってくれる。ある日突然自分に子供がいると告げられて戸惑わないはずはないのに、それでも真っすぐに向き合ってくれた。
「紬を第一に考えなくちゃって、母のようには絶対になりたくないって⋯⋯。でも本当はずっと忘れられなかった。二年前から⋯⋯ううん、それよりもずっと前から好きです。櫂さんが好きだから、ずっと一緒にいたい」
冷静に伝えようと思っていたのに、いつしか大きな瞳には涙の膜が張っている。そんな千咲を引き寄せ、櫂はもう一度抱きしめてくれた。
「千咲は泣き虫だな」
優しい声に、余計に涙が溢れる。
「す、すみません⋯⋯」
「いいんだ、知ってる。救命士として働いている時だって、傷病者の前では泣くまいと必死に我慢して頑張っているのを見てきたんだ。俺の前では我慢しないで。全部受け止めるから」



