沖田は、ツカツカと室内に入ってくる櫂に肩を竦める。
「あーあ、ほらね? 噂をすればってやつだな」
「お前はまだ仕事中だろ」
「休憩のついでに板倉さんをここに案内したんだよ。ちゃんと個室のドアは開けてただろ、そう睨むなよ」
そして沖田は「じゃあ板倉さん、お大事に」と言って、櫂と入れ違いに病室を出ていった。
しんと静寂が訪れ、千咲はソファに座ったまま櫂を見上げる。すると、彼は無言で隣に腰を下ろした。
「櫂さん、お仕事は――」
もう終わったのかと最後まで尋ねる前に、そっと抱き寄せられる。
「無事でよかった」
聞こえる鼓動はドクドクと速いリズムを刻んでおり、彼がどれだけ心配してくれたのかがわかる。千咲は安心させるように、痛まない右手を彼の背中に回した。



