二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~


(櫂さんがいてくれて、本当によかった)

きっと彼の存在がなければ、千咲はもっと酷く取り乱していただろう。

それは救急医だからという意味ではない。

ずっとひとりで紬を育ててきた千咲にとって、頼れるのは自分だけだった。紬を守れるのは自分だけ。そうやって常に気を張ってひとりで必死にやってきた。

けれど櫂と再会し、彼は頼っていいと言ってくれた。紬の成長を一緒に見守ってくれる存在として、家族になりたいと申し出てくれた。そんな彼だからこそ、紬を任せられたのだ。

「さ、じゃあお母さんもストレッチャーに。その出血じゃ、かなり痛みますよね」

沖田と呼ばれた男性看護師が、穏やかな笑顔で千咲をストレッチャーに促す。

正直、目眩がするほどに痛い。このままでは紬が戻ってきた時に抱っこもできない。櫂が言っていたように、今は自分の怪我の治療をしてもらわなくては。

「行きましょうか」

沖田ともうひとりの女性看護師に付き添われ、千咲は院内へと運ばれた。