「ありがとうございます。田上さん」
「おー。礼ならいつもの美味そうな弁当でいいぞ」
それと同時に、看護師が櫂を呼びに来た。
「櫂先生」
「あぁ、今行く。沖田、彼女を初療室へ」
「はい」
櫂は近くの男性看護師に指示しながらも、千咲から視線を逸らさない。
「千咲、君も治療を受けてきて。頼むから」
そう告げる彼の声は、心なしか震えている。どれだけ心配をかけてしまったのかを悟り、千咲は「はい」と頷いた。
すると彼はぎゅっと目を閉じ、意識を切り替えるように大きく息を吐く。そして、強い眼差しで真っすぐに前を見据えると、いつかと同じように千咲の肩にそっと手を置いた。
「紬は任せてくれ」
「お願いします」
千咲が頷いたのを確認して院内へと走っていく。その頼もしい後ろ姿に、身体の力が抜けた。



