看護師が櫂の声に応え、救急隊員がストレッチャーに眠っている紬を乗せる。
「千咲は? 抱きかかえていたのなら、君の方が――」
「私は大丈夫です」
千咲が首を振ると、すぐそばに控えていた田上がふたりの会話に口を挟む。
「板倉の方は左腕と左脚の裂傷、左手小指の骨折疑いです。娘さんの応急処置は現場で彼女が終えていて、バイタルも今のところ安定しています」
「あなたは、たしか⋯⋯」
櫂が田上に視線を向ける。
「板倉とは同僚なんです。ほら、お前も診てもらってこい」
「田上さん」
「とっとと治して戻ってこい。うちはいつだって人手不足だ。自分も満身創痍になりながら、それでも事故現場で冷静に応急処置ができる優秀な救命士を手放す余裕なんてねぇんだよ」
そう言って、彼は救急車へと戻っていく。千咲は彼の背に向かって頭を下げた。



