櫂は救急車に乗っているのが千咲だとわかるやいなや、慌てたように車内に上がってくる。ひっくひっくとしゃくりあげる千咲を、櫂はスクラブが血で汚れるのを厭わずに抱き寄せた。
「交通事故って聞いたけど、まさか君たちだったのか。その怪我――」
「お願い、紬を助けて⋯⋯!」
「頭を打ってるのか?」
櫂がハッとして身体を離し、救急隊員に抱っこされている紬に視線を向ける。
「わ、わかんない⋯⋯。抱きかかえて守ったつもりだったけど、しばらく泣いて、今は眠っちゃって。どうしよう、櫂さん⋯⋯」
救命士時代とはかけ離れた、たどだどしく拙い説明をする千咲に、櫂はゆっくりと言い聞かせる。
「落ち着いて。俺が診るから」
千咲にそう言うと、櫂は車から降りながら指示を飛ばす。
「念のためCTを撮る。すぐに準備を」
「はい」



