「えっ、板倉か?」
まさか傷病者として再び救急車に乗ることになるとは思わなかったけれど、今はそんな感傷に浸っている場合ではない。
「田上さん! 総合医療センターへお願いします!」
そこへ行けば、櫂がいる。
驚いた様子の田上だが、すぐに千咲の怪我を見て救命士の顔つきになった。
「わかった。すぐに総合にコールして。板倉、動けるか? 娘さんはこっちに」
田上がもうひとりの救急隊員に受け入れ要請の指示を出し、眠ってしまった紬をよこせと腕を伸ばした。
「でも」
「お前のその腕と脚の止血が先だ」
「⋯⋯はい」
救急車に乗り込むと、千咲は救急隊員に紬を任せ、田上に止血してもらう。



