あてもなく夜の街を彷徨い歩き、目についたのは一軒のバー。
千咲は吸い寄せられるようにその店に入り、注文したカクテルを悲しみや罪悪感とともに飲み込もうとした。
飲酒の習慣がないため、三杯目を頼む頃には頭がクラクラしてきた。それでなくてもこの一週間、まともな食事をしていないし、ほとんど眠れていないのだ。
酔いは回っているのに、思考だけはクリアなまま。祖母を亡くした現実を忘れ去ることなど、とてもできそうにない。
それでも飲むのをやめられないのは、このまま自分などどうなってもいいと自暴自棄になっていたためだ。
「その辺にしておいた方がいいよ」
グラスに伸ばした手を突然掴まれ、ハッとして横を見る。そこにいたのは、心配げな表情をした櫂だった。
「⋯⋯須藤先生?」
「あきらかに飲み過ぎだ。急性アルコール中毒で同僚に運ばれたくないのなら、そろそろやめた方がいい」



