(泣き疲れて眠いだけ? もし、頭を打ったことが原因の意識混濁だとしたら⋯⋯)
脳裏に浮かんだ最悪の事態を振り払うように、千咲は紬に笑顔で声をかけた。
「紬、大丈夫。ママがついてるからね」
「⋯⋯ねぇー」
言葉尻を捉えて相槌を打つような紬に、笑みではなく涙が零れた。
(今度こそ、絶対に助ける!)
痛む腕で紬をぎゅっと抱きしめる。
すると、救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
「すみません、救急車が停車する位置を空けていただけますか」
この道路ならば、そのまま車で入ってこられる。そう千咲が考えた通り、けたたましいサイレンの音をさせた救急車がすぐ近くに停車する。降りてきたのは、元同僚である田上だった。



