二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~


腕の中で泣きじゃくる紬が、千咲にぎゅうっと抱きついてくる。

(なにをボーっとしてるの! 自分から動くんでしょ! 今紬を助けられるのは私しかいないんだから)

千咲は自身を叱咤し、激しく痛む身体を起こす。

「運転手の方は⋯⋯」
「自力で運転席から出てきてたよ。頭から血が出てたけど、意識はあるみたいだ。でも、あれはかなり酔ってるな」

事故を起こした車の脇で、蹲っている男性が見えた。

「すみません、電話を代わっていただけますか?」
「え? は、はいっ⋯⋯」

119に電話をしているであろう女性に声を掛け、千咲が電話口に出る。

「はい、車と歩行者の接触事故です。負傷者は三名。全員意識はありますが、運転手の男性と一歳の娘が頭を打っている可能性があります。住所は――」

救急車を要請し終えると、周囲の人に手伝いを頼んだ。