二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~


「お話の途中だったのに、すみません」
「いや、遅くまで悪かった」
「あの⋯⋯近い内に、ゆっくり会える日はありますか?」

このまま話を続けるのは難しいため、千咲は日を改めようと提案した。

「明日は早出だから、急患がなければ夕方には上がれるはずだ。また寄ってもいいか?」
「早出なら、帰って休んだ方がいいんじゃ⋯⋯」

それどころか、今日だって千咲の家に寄らずに帰宅して身体を休めるべきだったのだ。顔を見にきただけと言っていた櫂を、自分の都合で遅くまで引き止めてしまった。

内心で反省していると、櫂が千咲の頭をぽんと撫でる。

「俺が君たちの顔を見たくて来てるんだ。千咲が気に病む必要はないよ」
「櫂さん⋯⋯」
「それに、なにか聞きたいことがあるんだろう? 千咲がなにか不安に感じているのなら、先延ばしにはしたくない」

こちらを思いやる優しい言葉に、胸がきゅっと甘く締め付けられた。

「ありがとうございます。じゃあ、明日もご飯を用意して待っててもいいですか?」
「あぁ。楽しみにしてる」

紬を抱っこしている千咲ごと抱きしめると、櫂は微笑みを残して帰っていった。