「千咲?」
絶句する千咲を怪訝に思ったのか、櫂は顔を覗き込んでくる。しかし、千咲はなにも言えずに固まったままだ。
(私、櫂さんの邪魔になってるんじゃ⋯⋯)
決して、彼がそう言ったわけではない。櫂が千咲や紬を悪く言うわけがないし、もしも千咲たちを思って海外派遣の話を断っていたとしても、それをこちらに伝えはしないだろう。
「なにを考えてる?」
「⋯⋯え?」
「不安や不満があるのなら、できるだけ言葉にして教えてほしい。もう二度と、千咲とすれ違いたくないんだ」
櫂の表情を見て、千咲はハッとする。先ほど、同じ間違いは二度としないと考えたばかりなのに、またひとりで悲劇のヒロインぶるところだった。
「あの、私の質問に正直に答えてくれますか?」
「もちろん。千咲に嘘なんかつかないよ」
「私や紬を思っての嘘もつかないと、約束してください」
そう告げると、櫂は目を見開く。



