(口元が笑ってる。また私の反応を見て楽しんでるんだ)
何気なく過ごしている時に先ほどのような甘いセリフを投げてきたり、それに照れる千咲を面白がる意地悪な面があったりするのも、再会して初めて知った。
櫂のことを知るたびに、心が踊る。仕事場での一面しか知らなかった彼と過ごす時間を重ねるたびに、千咲の櫂に対する想いもどんどん積もっていく気がした。
ふと会話が途切れ、静寂が訪れる。
櫂がテーブルにマグカップを置く音が、やけに響いて聞こえた。次いで、互いに引き寄せられるように唇が重なる。
一度目は軽く触れるだけだったキスは、徐々に深さを増していく。何度も角度を変えては口づけを繰り返し、いつしか千咲は櫂の腕の中に閉じ込められていた。
「ん⋯⋯っ」
「千咲」
かすかに掠れた声音で名前を呼ばれ、鼓動が速まる。舌で口内を愛撫されると全身に甘い痺れが走り、頬に触れる大きな手は心ごと包むこんでくれるような安心感があった。



