苦笑した櫂を見て、未依の恋心は決して一方的ではないのではと感じた。彼女はすべてを諦めたような寂しげな顔をしていたけれど、ただ気持ちがすれ違っているだけなのかもしれない。
もしかしたら櫂は兄の気持ちを知っているからこそ、未依が離婚すると言い出した時に引き止めたのだろうか。
「幸せになってほしいな。あんな寂しそうな笑顔は、未依には似合わないから」
彼女は太陽のような明るい笑顔の持ち主だ。未依と一緒にいるだけで、気持ちが前向きになれるような気がする。
(どんな人か知らないけど、未依を幸せにしてあげてほしい)
彼女が悲しそうに微笑む姿は見たくない。他人が口を出すことではないというのは重々承知だが、そう願わずにはいられなかった。
すると、櫂は蕩けるような視線で千咲を見つめてくる。
「なんですか?」
「いや。そういう友人思いの優しい千咲も好きだなと思って」
甘い眼差しで『好き』と言われて、冷静でいられるはずがない。千咲は真っ赤になった頬を押さえ、素知らぬ顔でコーヒーを飲む櫂を睨んだ。



