「⋯⋯嫌か?」
掠れた声で尋ねられ、鼓動があり得ないほど速くリズムを刻む。その音が、しんと静まり返った車内に響いてしまいそうだった。千咲は小さく首を横に振り、ゆっくりとまぶたを伏せる。
唇が触れそうになる瞬間。
「んーっ!」
後部座席でぐっすり眠っていた紬が、腕を伸ばして大きく伸びをした。
その声に、千咲はぴたりと身体を硬直させ、櫂はすぐさま身を引いて体勢を整える。
(私、紬が後ろにいたのに、なにを⋯⋯!)
羞恥と自己嫌悪で悶える千咲の頭をぽんと撫で、櫂が先に後部座席を振り返った。
「紬、起きたのか」
寝起きの紬は櫂の顔を見るなり、満面の笑みを向けた。



