二度と恋はしないと決めたのに~フライトドクターに娘ごと愛されました~


優しかった祖母の声に、隣の櫂の声が重なる。

「何度だって言う。もう自分を責めなくていい。君は十分頑張ってる」

あの夜にも言ってくれた言葉を繰り返され、千咲は呼吸がしにくいほどの息苦しさを感じた。甘く痺れるような、切なくて泣き出したくなるような、色んな感情がごちゃ混ぜになって胸が苦しくて仕方がない。

千咲の内側には収まりきらないほどの感情の高ぶりが、涙となって溢れてくる。ぽろぽろと零れ落ちる涙を、櫂の指が優しく拭う。

あの夜のように、抱きしめてほしい。

そんな欲求が胸の奥からせり上がってきて、千咲は狼狽えた。恋にうつつを抜かし、子供を蔑ろにする愚かな母親のようにはなりたくない。

けれど、込み上げてくる感情を抑えるのは難しかった。

「⋯⋯優しくされると、甘えたくなります」
「それでいいんだ。甘えてほしいし、頼ってほしい」

いつの間にか、櫂の顔が目の前にある。千咲が息を詰めると、涙を拭いていた櫂の指先が頬を撫でた。