最期は看取れたものの、千咲が検査を受けるように言っていれば助かったのではないかという思いがずっと消えないまま頭にこびりついている。
少しの判断ミスで命を取りこぼすということを、嫌という程知ってしまった。
「救急車に乗るのが怖くなってしまって⋯⋯。情けないですよね」
自嘲する千咲の手を、櫂がぎゅっと握る。
「そんなことはない。千咲が優秀な救命士だというのは、何度も居合わせたから知ってる。でも、俺たちの仕事は体力的にも精神的にもキツいし、生半可な覚悟じゃできない。厳しい言い方をするようだが、この仕事に気持ちが前向きでないのなら復帰すべきじゃないと思う」
千咲も同じ意見のため、小さく頷く。すると、櫂は「でも」と続けた。
「千咲が本当に救急車に乗りたくなったら、その時は応援するし全力でサポートする。お祖母さんは、千咲が救命士になったのを誇りに思ってくれていたんだろう? きっと、自責の念に囚われたままでいてほしくないと思ってるんじゃないかな」
千咲の脳裏に、祖母との思い出が蘇る。
『みんなの命を守ってくれる救命士さんになったのね。千咲は私の誇りよ』
『ちゃんと栄養のある食事を取って、しっかり働いていらっしゃい』



