さらに、未婚のシングルマザーというだけで白い目で見られる時もある。
自分に対する不甲斐なさ、紬に対する罪悪感、周囲への苛立ち。それらを胸に抱き、何度ひとりで泣いただろう。
いくら一生懸命に子育てをしようと、それが誰かに認められ、まして褒められることなど滅多にない。
それでも、産むと決めたのは千咲自身。父親がいない分、目一杯の愛情で育てるのだと決意した時のことを思い出し、紬の笑顔のために生きてきた。
「人ひとり育てるんだ、真剣に向き合えば向き合うだけ大変に決まってる。ひとりで全部背負ってきたんだから、余裕がなくなる時だってあったよな」
車がゆっくりと停車する。いつの間にか、千咲の自宅の近くにあるパーキングへと到着していた。
櫂は身体ごと千咲に向き合うと、真っすぐな眼差しを向けてくる。
「これからは、俺を頼ってほしい」
「⋯⋯櫂さん」
「融通が利く仕事とは言えないけど、今は働き方がだいぶ改善されて、休みもきちんと取れるようになったんだ。千咲に信用してもらえるように努力するし、こうやって三人で過ごす時間がほしい。一緒に、紬の成長を見守らせてほしい。その先に家族になるという選択をしてもらえたら嬉しいけど、それは俺が千咲の夫として相応しいと思えたらでいい」



