一度三十分ほどお昼寝タイムを挟んだものの、それでも思いっきりはしゃいだせいか午後四時を過ぎた今、紬は電池が切れたようにぐっすりと眠っている。
抱っこしていた紬をチャイルドシートに乗せると、櫂から「よかったら、隣に来ないか」と誘われた。少し躊躇ったが、紬が熟睡しているのを確認し、千咲は助手席へと乗り込む。
車が走り出すと、考えていた以上に運転席との距離が近いことに気付いた。行きは紬とふたりで後部座席でDVDを見つつ、たまに櫂と会話をする程度だったから、車の密室性に無頓着だったのだ。
彼が確認のためにバックミラーに視線をやったり、左手をシフトレバーに伸ばしたりするだけで、千咲の心臓がバクバクと脈を速める。千咲自身が見られているわけでも、こちらに向けて手が伸ばされたわけでもないとわかっているのに、かつて熱を孕んだ瞳で見つめられ、あの大きな手に愛されたことがあるのだと思い出してしまった。
(やだ、紬が後ろで寝ているのに、なにを考えてるの)
おかしな思考を振り払おうと、両手で頬をぺしっと叩く。
「千咲?」
「は、はい?」
「どうした? 何回か呼んだんだが」
運転をしながら、気遣わしげな声がかけられる。



