名前で呼んだのは、無意識だった。恥ずかしさに思わず口元に手を当てたが、櫂は嬉しそうに千咲を見つめている。
「救命士の制服も似合ってたけど、私服姿も綺麗だ」
「もっ、もう! そういうのはいいですから!」
まるで耳元で囁かれる睦言のように甘く響き、千咲は耐えきれずに赤く染まった耳を押さえて櫂から離れる。
今日の千咲の格好は、散々悩んだあげく、シャツワンピースにワイドパンツを合わせた動きやすさ重視のスタイルだ。唯一、シャツの上に重ねた秋らしいテラコッタカラーのビスチェがオシャレを意識した点だが、褒められるほどのファッションでもない。
「本心なのに、信じてないな?」
それに、楽しそうに笑う彼の方がよほど私服姿が様になっている。紺色のシャツに同系色のカーディガンを羽織り、ボトムはデニムではなくライトグレーのテーパードパンツを選んでいるのがなんとも上品でオシャレ上級者に見えた。
車で迎えに来てくれた時にも見惚れてしまったが、パーク内にいる女性たちの視線を集めているのだから、きっと千咲の贔屓目ではないはずだ。
「ほら、チェックインしよう」



