思いがけない発言に、千咲は頬を真っ赤に染める。
メッセージをもらって以来、千咲自身もずっと頭の片隅にその考えがあった。
櫂とは病院で何度も顔を合わせていたが、プライベートな会話をしたのはあの夜だけ。当然、ふたりで出掛けたことなど一度もない。
彼と向き合うために初めて一緒に出掛けることになったものの、なにを話せばいいのか、どんな服で行くべきか、初々しい学生の初デート前のような気持ちになり、この一週間そわそわと落ち着きのない日々を送っていた。
恋だの愛だのは信じられないと冷めた考えを持っていたはずが、櫂からの誘いにこんなにも胸をときめかせているなんて、自分でも驚いている。
「はは、真っ赤だ」
「櫂さんが急に変なことを言うからです」
千咲が反論すると、彼が目を丸くしている。
「⋯⋯どうしたんですか?」
「やっと名前で呼んでくれた。この前は『先生』なんて他人行儀に呼ばれて、かなりショックだったんだ」
「あっ⋯⋯」
「これからも、そう呼んでほしい」



