エメラが懐妊してからも、朝の仕事風景は変わらない。
その日の朝も執務室に入ってきたエメラを、デスクに座るアディは気遣う。
「エメ姉、無理しなくていいよ。妊婦なんだからさ」
「いいえ! 可能な限りは、わたくしも側近として働きますわ!」
エメラは長年一人で魔獣界を治めてきた責任感もあって、仕事に対しての熱意が凄まじく強い。
クルスがいなくなってからは、以前と同じくエメラが側近として一人でアディを支えている。だが、もうそんな時間も残り少ない。
「その事なのですが、そろそろ新しい側近が必要ですわね」
出産が近付けばエメラは働けなくなるし、結婚して王妃になれば新しい側近が必要となる。どの道、後任の側近を決めなければならない。
「あぁ、それなら、もう決めたよ。ちょうど今日から来るよ」
「そうなのですか? 事前にご相談してほしかったですわ」
「まぁ、いいじゃん」
確かに魔獣王となったアディは、もう半人前ではない。アディを信用していない訳ではないが、仕事を共にする者の人選はエメラにとっても重要なのだ。
その時、執務室のドアが外側からノックされた。
「あ、新しい側近が来たよ。エメ姉も仲良くしてやってよ」
「承知致しましたわ」
「側近くん、入っていいよー!」
アディの返事を受けて、ドアがそっと開かれる。
出勤初日で緊張でもしているのか、控えめで自信なさげなドアの開け方だ。
ようやくドアが全開して、部屋に入って来たのは深緑の髪に金色の瞳、黒のスーツ姿の爽やかな青年。
彼を見た瞬間に、まずエメラが叫んだ。
「えぇっ!? クルスさん!?」
さすがにクルスに以前のような笑顔はない。バツが悪そうな顔をして視線を泳がせている。
「その……、クルスです。よろしくお願いします……」
「うん、クルスくん。よろしくね」
「ちょ、ちょっとお待ち下さいませー!」
訳も分からずにエメラは一人で混乱する。
どういう訳かアディは笑顔で普通に受け入れているが、クルスは罪人だ。今は勾留の身で確実に有罪のはず。
その日の朝も執務室に入ってきたエメラを、デスクに座るアディは気遣う。
「エメ姉、無理しなくていいよ。妊婦なんだからさ」
「いいえ! 可能な限りは、わたくしも側近として働きますわ!」
エメラは長年一人で魔獣界を治めてきた責任感もあって、仕事に対しての熱意が凄まじく強い。
クルスがいなくなってからは、以前と同じくエメラが側近として一人でアディを支えている。だが、もうそんな時間も残り少ない。
「その事なのですが、そろそろ新しい側近が必要ですわね」
出産が近付けばエメラは働けなくなるし、結婚して王妃になれば新しい側近が必要となる。どの道、後任の側近を決めなければならない。
「あぁ、それなら、もう決めたよ。ちょうど今日から来るよ」
「そうなのですか? 事前にご相談してほしかったですわ」
「まぁ、いいじゃん」
確かに魔獣王となったアディは、もう半人前ではない。アディを信用していない訳ではないが、仕事を共にする者の人選はエメラにとっても重要なのだ。
その時、執務室のドアが外側からノックされた。
「あ、新しい側近が来たよ。エメ姉も仲良くしてやってよ」
「承知致しましたわ」
「側近くん、入っていいよー!」
アディの返事を受けて、ドアがそっと開かれる。
出勤初日で緊張でもしているのか、控えめで自信なさげなドアの開け方だ。
ようやくドアが全開して、部屋に入って来たのは深緑の髪に金色の瞳、黒のスーツ姿の爽やかな青年。
彼を見た瞬間に、まずエメラが叫んだ。
「えぇっ!? クルスさん!?」
さすがにクルスに以前のような笑顔はない。バツが悪そうな顔をして視線を泳がせている。
「その……、クルスです。よろしくお願いします……」
「うん、クルスくん。よろしくね」
「ちょ、ちょっとお待ち下さいませー!」
訳も分からずにエメラは一人で混乱する。
どういう訳かアディは笑顔で普通に受け入れているが、クルスは罪人だ。今は勾留の身で確実に有罪のはず。



