クルスが怯んだ隙に、エメラは掴まれた手を振り払って逃れる。
クルスが後ずさるようにその場から離れると、代わってエメラがアディに向かって駆け出す。
「アディ様ぁっ……!!」
そのままの勢いでアディの胸に飛び込む。そしてアディの肩の後ろに両腕を回して強く抱きしめる。
アディはその勢いに負ける事なくエメラを受け止めて、その腰に両腕を回して抱き返す。二人は完全に密着した。
「ふふ、エメ姉。嬉しい事言ってくれるね? もう一回言ってよ」
「はい。アディ様、愛しております。愛して……ます」
エメラは自分でも気付かないうちに大粒の涙を零して号泣していた。アディへの愛を叫ぶ時、こんなにも涙脆くなる自分が不思議で仕方がない。
「ほら、もう泣かないで」
アディは泣きじゃくるエメラの頭を数回撫でる。普段とは逆でエメラの方が子供のようだ。
「あ~、エメ姉。嬉しいんだけどさ、後でゆっくり抱いてあげるよ」
そう言って名残惜しそうにエメラの体を優しく離した。そのアディの目はすでに目の前の敵に向いている。
「まず、アイツを片付けなきゃね」
「アディ様……お体は大丈夫ですの?」
エメラが心配するのも無理はない。アディは魔力の欠乏により、起き上がるのも難しい状態であったはず。こんな短時間で魔力が回復するとも思えない。
だがアディを見ていると無理をしているようにも見えない。一体どういう事なのか。
ようやく二人が離れて向かい合って立つと、アディはエメラの両肩に手を置いて子供のように無邪気に笑う。
「何言ってるの、余裕だよ。だって僕、魔獣王だよ?」
その笑顔を見て、エメラはようやく分かった。全てはアディの思い通りなのだと。
エメラもクルスも、誰もがアディの手の平の上で転がされていたのだと。
「さて、クルスくん。どんなお仕置きしようかね?」
アディが歩いて距離を詰めるが、クルスは地面に膝を突いて身動きが取れない。今度はクルスが魔力の欠乏によって力が出せないのだ。
「く、くそ……! アディ、一体どうやって……」
クルスの顔が苦痛で歪み、口調が乱暴になってきているところからも余裕のなさが表れている。これがクルスの素なのだろう。
かと思うと、同じようにアディも口元を歪めて邪悪な微笑みでクルスを見下す。
「どうもこうもないよ。僕はずっと楽しんで待ってたよ。君が勝手に力尽きるのをね」
皮肉にもそのセリフは、先ほどのクルスと全く同じだ。
クルスが後ずさるようにその場から離れると、代わってエメラがアディに向かって駆け出す。
「アディ様ぁっ……!!」
そのままの勢いでアディの胸に飛び込む。そしてアディの肩の後ろに両腕を回して強く抱きしめる。
アディはその勢いに負ける事なくエメラを受け止めて、その腰に両腕を回して抱き返す。二人は完全に密着した。
「ふふ、エメ姉。嬉しい事言ってくれるね? もう一回言ってよ」
「はい。アディ様、愛しております。愛して……ます」
エメラは自分でも気付かないうちに大粒の涙を零して号泣していた。アディへの愛を叫ぶ時、こんなにも涙脆くなる自分が不思議で仕方がない。
「ほら、もう泣かないで」
アディは泣きじゃくるエメラの頭を数回撫でる。普段とは逆でエメラの方が子供のようだ。
「あ~、エメ姉。嬉しいんだけどさ、後でゆっくり抱いてあげるよ」
そう言って名残惜しそうにエメラの体を優しく離した。そのアディの目はすでに目の前の敵に向いている。
「まず、アイツを片付けなきゃね」
「アディ様……お体は大丈夫ですの?」
エメラが心配するのも無理はない。アディは魔力の欠乏により、起き上がるのも難しい状態であったはず。こんな短時間で魔力が回復するとも思えない。
だがアディを見ていると無理をしているようにも見えない。一体どういう事なのか。
ようやく二人が離れて向かい合って立つと、アディはエメラの両肩に手を置いて子供のように無邪気に笑う。
「何言ってるの、余裕だよ。だって僕、魔獣王だよ?」
その笑顔を見て、エメラはようやく分かった。全てはアディの思い通りなのだと。
エメラもクルスも、誰もがアディの手の平の上で転がされていたのだと。
「さて、クルスくん。どんなお仕置きしようかね?」
アディが歩いて距離を詰めるが、クルスは地面に膝を突いて身動きが取れない。今度はクルスが魔力の欠乏によって力が出せないのだ。
「く、くそ……! アディ、一体どうやって……」
クルスの顔が苦痛で歪み、口調が乱暴になってきているところからも余裕のなさが表れている。これがクルスの素なのだろう。
かと思うと、同じようにアディも口元を歪めて邪悪な微笑みでクルスを見下す。
「どうもこうもないよ。僕はずっと楽しんで待ってたよ。君が勝手に力尽きるのをね」
皮肉にもそのセリフは、先ほどのクルスと全く同じだ。



