クルスは再び結界魔法を使い、今度は城のみを封鎖したのだ。
「クルスさん、あなた、何という無茶を……!」
「少しの間だけですよ。あなたを手に入れるまでのね」
そう言うクルスの表情には余裕がなく、どこか苦しそうにしている。いや実際に苦しいのだ。
隠れているディアも結界が張られた事に気付いたが、まだエメラを助けに行かない。むしろクルスの様子が気になるようだ。
「クルスさん、今すぐ結界を解いて下さいませ! もうあなたの魔力は限界のはずですわ!」
クルスは意図的に城に結界を張ったのではない。城にしか張れなかったのだ。
一度結界を破られたクルスには、再び魔獣界を結界で封鎖できるほどの魔力は残っていない。
禁断の魔法は膨大な魔力を消費する事から、乱用すれば術者の命を削る。そういう意味でも『禁断』なのであった。
エメラの叫びを聞き入れず、クルスはエメラの片手の手首を掴んだ。そして強引に城に引き入れようとする。
「僕の限界が先か、エメラ様が落ちるのが先か。面白いじゃないですか」
「無駄ですわ! わたくしはアディ様を愛しています。アディ様への愛は決して揺るぎません!」
「あの汚らわしい王子の名を呼ぶなっ!!」
クルスの激情が耳に届いたディアは、反射的にエメラを助けようと動こうとした……が、止まった。
エメラの金色の瞳が満月のように見開かれる。
向かい合うクルスの背後に見えた人影……それが誰であるかを認識した瞬間。
「汚い手でエメ姉に触らないでよ」
たった数時間なのに、その懐かしい声が耳に響いた瞬間に愛しさが溢れる。
エメラの表情の変化と、その声に気付いたクルスが振り返る。
そこには、黒衣を纏った魔獣王……もとい、魔獣王子・アディが堂々たる威厳を放ちながら立ち、鋭い眼光でクルスを威圧する。
「なっ!? アディ……!? どうやって!?」
「誰が汚らわしい王子だって? 僕を呼び捨ても気に食わないね」
アディは地下牢に幽閉されているはずで、見張りの兵もいたはず。
全くの無傷で、しかも魔力が回復したのか全く疲労している様子もない。むしろ余裕の笑いを見せつけている。
「クルスさん、あなた、何という無茶を……!」
「少しの間だけですよ。あなたを手に入れるまでのね」
そう言うクルスの表情には余裕がなく、どこか苦しそうにしている。いや実際に苦しいのだ。
隠れているディアも結界が張られた事に気付いたが、まだエメラを助けに行かない。むしろクルスの様子が気になるようだ。
「クルスさん、今すぐ結界を解いて下さいませ! もうあなたの魔力は限界のはずですわ!」
クルスは意図的に城に結界を張ったのではない。城にしか張れなかったのだ。
一度結界を破られたクルスには、再び魔獣界を結界で封鎖できるほどの魔力は残っていない。
禁断の魔法は膨大な魔力を消費する事から、乱用すれば術者の命を削る。そういう意味でも『禁断』なのであった。
エメラの叫びを聞き入れず、クルスはエメラの片手の手首を掴んだ。そして強引に城に引き入れようとする。
「僕の限界が先か、エメラ様が落ちるのが先か。面白いじゃないですか」
「無駄ですわ! わたくしはアディ様を愛しています。アディ様への愛は決して揺るぎません!」
「あの汚らわしい王子の名を呼ぶなっ!!」
クルスの激情が耳に届いたディアは、反射的にエメラを助けようと動こうとした……が、止まった。
エメラの金色の瞳が満月のように見開かれる。
向かい合うクルスの背後に見えた人影……それが誰であるかを認識した瞬間。
「汚い手でエメ姉に触らないでよ」
たった数時間なのに、その懐かしい声が耳に響いた瞬間に愛しさが溢れる。
エメラの表情の変化と、その声に気付いたクルスが振り返る。
そこには、黒衣を纏った魔獣王……もとい、魔獣王子・アディが堂々たる威厳を放ちながら立ち、鋭い眼光でクルスを威圧する。
「なっ!? アディ……!? どうやって!?」
「誰が汚らわしい王子だって? 僕を呼び捨ても気に食わないね」
アディは地下牢に幽閉されているはずで、見張りの兵もいたはず。
全くの無傷で、しかも魔力が回復したのか全く疲労している様子もない。むしろ余裕の笑いを見せつけている。



