エメラとディアは魔獣界の城の手前まで来ると、そこで足を止める。
目の前にそびえる見慣れた城は普段と変わらないが、不気味なほど静まり返っている。クルスは籠城の構えなのだろうか。
「ディア様。わたくし一人で行かせて下さいませ」
あまりにも危険な申し出だが、ディアはエメラの強い意志を汲んで頷いた。
「分かりました。ですが、危険だと判断したら私も行きます」
「ありがとうございます」
クルスの目的はエメラであり、命に限って言えばエメラが一番安全な立場でもある。クルスは説得できる相手ではないが、何とか最善の形を見付け出したい。
それに……エメラは思うところがある。クルスと対面するのが怖い訳ではない。
(クルスさんが心配ですわ……)
エメラが心配したのはアディでもなく魔獣界でもなく、クルスであった。
ディアは後方の木の陰に隠れて城門に向かうエメラを見守っている。エメラに何かあれば、いつでも行けるように身構えながら。
エメラは堂々とした足取りで真っ直ぐ城の城門を目指して歩く。
閉じられた城門の前で立ち止まると、深呼吸をして門を見上げる。
この門の先はクルスに支配されていて味方はいない。それを覚悟の上だが、今はディアに見守られてる事で勇気付けられる。
しばらくすると、エメラが何もせずとも重い扉が開門していく。その先に待ち構えていたのは当然、クルスだ。
「あれ? エメラ様お一人なのですか」
クルスは目を丸くして大げさに驚いた。魔王とディアが攻め込んでくると思って構えていたからだ。
しかしエメラ一人ならば好都合だと思ったのか、すぐに笑顔に変わる。
「クルスさん、お願いがありますの」
「はい、何でしょうか。あなたの望みなら何でも叶えたいですね」
当然、都合の悪い望みであれば却下されるだろう。
エメラは注意深くクルスの顔色を確かめる。思った通り、クルスの様子がおかしい。
「これ以上、禁断の魔法を使わないで下さい。クルスさんのためなのですわ」
魅了、結界、封印。これらの魔法が、なぜ禁断と言われて禁書とされるのか。それは、その効果だけではない。
「僕は、あなたのために魔法を使うのです。それに、もう遅いです」
「……なんですって? まさか!?」
エメラが振り返って周囲を見渡すと、城を取り囲む結界が見えた。
目の前にそびえる見慣れた城は普段と変わらないが、不気味なほど静まり返っている。クルスは籠城の構えなのだろうか。
「ディア様。わたくし一人で行かせて下さいませ」
あまりにも危険な申し出だが、ディアはエメラの強い意志を汲んで頷いた。
「分かりました。ですが、危険だと判断したら私も行きます」
「ありがとうございます」
クルスの目的はエメラであり、命に限って言えばエメラが一番安全な立場でもある。クルスは説得できる相手ではないが、何とか最善の形を見付け出したい。
それに……エメラは思うところがある。クルスと対面するのが怖い訳ではない。
(クルスさんが心配ですわ……)
エメラが心配したのはアディでもなく魔獣界でもなく、クルスであった。
ディアは後方の木の陰に隠れて城門に向かうエメラを見守っている。エメラに何かあれば、いつでも行けるように身構えながら。
エメラは堂々とした足取りで真っ直ぐ城の城門を目指して歩く。
閉じられた城門の前で立ち止まると、深呼吸をして門を見上げる。
この門の先はクルスに支配されていて味方はいない。それを覚悟の上だが、今はディアに見守られてる事で勇気付けられる。
しばらくすると、エメラが何もせずとも重い扉が開門していく。その先に待ち構えていたのは当然、クルスだ。
「あれ? エメラ様お一人なのですか」
クルスは目を丸くして大げさに驚いた。魔王とディアが攻め込んでくると思って構えていたからだ。
しかしエメラ一人ならば好都合だと思ったのか、すぐに笑顔に変わる。
「クルスさん、お願いがありますの」
「はい、何でしょうか。あなたの望みなら何でも叶えたいですね」
当然、都合の悪い望みであれば却下されるだろう。
エメラは注意深くクルスの顔色を確かめる。思った通り、クルスの様子がおかしい。
「これ以上、禁断の魔法を使わないで下さい。クルスさんのためなのですわ」
魅了、結界、封印。これらの魔法が、なぜ禁断と言われて禁書とされるのか。それは、その効果だけではない。
「僕は、あなたのために魔法を使うのです。それに、もう遅いです」
「……なんですって? まさか!?」
エメラが振り返って周囲を見渡すと、城を取り囲む結界が見えた。



