エメラは目を閉じて、両手で触れた腹部から魔力を感じ取ろうと意識を集中する。
「す、すみません、少々お待ち下さいませ……!」
しかし体内からアディの魔力は少しも感じない。かと思うと、別の所からアディの魔力が感じられた。
それは、いつもエメラの胸元を飾っている『婚約ペンダント』の青い宝石であった。
その宝石にはアディの魔力が込められているので、魔力を感じるのは当然。
エメラは悔しそうに奥歯を噛んで壇上の魔王を睨みつけた。
「くっ……からかいましたわね……!!」
「ヒャハハハ!! なぁに勘違いしてんだよ、そんなに身に覚えがあるのかぁ?」
身に覚えなら充分にあるので否定できない。実際、いつ懐妊してもおかしくない状況なのだから。
「まぁ、本当にデキた日には祝ってやるぜ」
それは当然だ。アディの子という事は、魔王にとっては曽孫。この魔王はあと何万年生きるつもりなのだろうか。
これ以上、魔王を相手にしても腹が立つだけである。エメラは何も言い返さずに魔王に背中を向けた。
「クルスさん、帰りますわよ!!」
「え、はい」
魔王にクルスを紹介するという目的は果たしたので長居の必要はない。エメラは一刻も早く魔王から離れたい。
それに……急にアディの事が心配になってきた。
結局は魅了の効果ではなくても、エメラの心身はアディから離れられないのだ。
まともな挨拶もせずに玉座の間から出たエメラと、後に続くクルスであった。
そのまま早足で魔王の城を出ると、城門の前でふとエメラが立ち止まる。
そして振り返ると、後方で立ち止まったクルスと向かい合う。
「あの、クルスさん」
「はい? どうかしましたか?」
相変わらず邪気のない爽やかな笑顔だ。いや、邪気どころかクルスには感情すら感じられない。
「あなたは一体、何者なんですの?」
あまりにも突然で単刀直入。エメラらしく凛とした表情でシンプルな疑問を素直に口にする。
今まで何度もクルスに感じた違和感。おそらくクルスは真実を語らないと予想はできるが、何かのヒントくらいは得られるかもしれない。
クルスはやはり笑顔を崩さない。その笑顔の裏に何を隠しているのだろうか。
「え、なんですか突然? 僕はずっとエメラ様を追い続けている、ただの魔獣ですよ」
予想通りの答えにエメラは落胆する。感情は見えないが嘘を言っているようにも見えない。エメラを想っているのは真実なのだろう。
「す、すみません、少々お待ち下さいませ……!」
しかし体内からアディの魔力は少しも感じない。かと思うと、別の所からアディの魔力が感じられた。
それは、いつもエメラの胸元を飾っている『婚約ペンダント』の青い宝石であった。
その宝石にはアディの魔力が込められているので、魔力を感じるのは当然。
エメラは悔しそうに奥歯を噛んで壇上の魔王を睨みつけた。
「くっ……からかいましたわね……!!」
「ヒャハハハ!! なぁに勘違いしてんだよ、そんなに身に覚えがあるのかぁ?」
身に覚えなら充分にあるので否定できない。実際、いつ懐妊してもおかしくない状況なのだから。
「まぁ、本当にデキた日には祝ってやるぜ」
それは当然だ。アディの子という事は、魔王にとっては曽孫。この魔王はあと何万年生きるつもりなのだろうか。
これ以上、魔王を相手にしても腹が立つだけである。エメラは何も言い返さずに魔王に背中を向けた。
「クルスさん、帰りますわよ!!」
「え、はい」
魔王にクルスを紹介するという目的は果たしたので長居の必要はない。エメラは一刻も早く魔王から離れたい。
それに……急にアディの事が心配になってきた。
結局は魅了の効果ではなくても、エメラの心身はアディから離れられないのだ。
まともな挨拶もせずに玉座の間から出たエメラと、後に続くクルスであった。
そのまま早足で魔王の城を出ると、城門の前でふとエメラが立ち止まる。
そして振り返ると、後方で立ち止まったクルスと向かい合う。
「あの、クルスさん」
「はい? どうかしましたか?」
相変わらず邪気のない爽やかな笑顔だ。いや、邪気どころかクルスには感情すら感じられない。
「あなたは一体、何者なんですの?」
あまりにも突然で単刀直入。エメラらしく凛とした表情でシンプルな疑問を素直に口にする。
今まで何度もクルスに感じた違和感。おそらくクルスは真実を語らないと予想はできるが、何かのヒントくらいは得られるかもしれない。
クルスはやはり笑顔を崩さない。その笑顔の裏に何を隠しているのだろうか。
「え、なんですか突然? 僕はずっとエメラ様を追い続けている、ただの魔獣ですよ」
予想通りの答えにエメラは落胆する。感情は見えないが嘘を言っているようにも見えない。エメラを想っているのは真実なのだろう。



