そんな険悪な二人の間に割って入るようにして、自主的にクルスが一歩前に出た。
「初めまして、魔王オラン様。アディ様の側近を務めております、クルスと申します」
今回も礼儀正しく完璧な自己紹介である。
魔王は悪魔の赤い瞳を細めて、クルスを見定めるかのように凝視する。
「てめぇも魔獣か」
「はい。バードッグです」
最強の魔獣と言われる希少種の魔獣・バードッグ。
だが魔王が気になるのは、そこではない。ふっと魔王から笑みが消える。
「どこかで見た顔だなぁ?」
クルスは動じないが、エメラは再び違和感を覚える。
以前にディアに紹介した時も『どこかで会ったような気がする』と言っていた。アディと容姿が似ているのは確かだが、他にも何かあるのだろうか。
今回もクルスは笑顔で否定する。
「いいえ。お初にお目にかかります」
魔王の前でも緊張せずに落ち着いた態度なのも気になる。魔王はその返答に納得していない様子だが、再びニヤリと笑った。
「まぁ、それでもいいぜ。オレ様には関係ねえ」
魔王は何かを知っているような素振りだが、クルスに関してそれ以上は突っ込んだ話はしない。そして、やはり話はエメラに振る。
「おい、魔獣女」
「はい、悪魔男さん」
先ほどと全く同じ前振りを繰り返す二人。決して名前では呼び合わないが、実は息ピッタリなのかもしれない。
魔王は玉座で足を組むと、今度はエメラを凝視する。魔王に見つめられるのは気味が悪いと、エメラはあからさまに嫌そうな顔をして返す。
「てめぇからアディの魔力を感じるぜ?」
「えっ……!?」
エメラは反射的に腹部を両手で押さえた。
アディの魔力を体に宿す事の意味は限られる。魅了の魔法は相手の体内に魔力を注ぐ事で発動するが、今は違う。
残る可能性はアディの魔力を持つ子を宿す事。つまり『懐妊』しかない。
「初めまして、魔王オラン様。アディ様の側近を務めております、クルスと申します」
今回も礼儀正しく完璧な自己紹介である。
魔王は悪魔の赤い瞳を細めて、クルスを見定めるかのように凝視する。
「てめぇも魔獣か」
「はい。バードッグです」
最強の魔獣と言われる希少種の魔獣・バードッグ。
だが魔王が気になるのは、そこではない。ふっと魔王から笑みが消える。
「どこかで見た顔だなぁ?」
クルスは動じないが、エメラは再び違和感を覚える。
以前にディアに紹介した時も『どこかで会ったような気がする』と言っていた。アディと容姿が似ているのは確かだが、他にも何かあるのだろうか。
今回もクルスは笑顔で否定する。
「いいえ。お初にお目にかかります」
魔王の前でも緊張せずに落ち着いた態度なのも気になる。魔王はその返答に納得していない様子だが、再びニヤリと笑った。
「まぁ、それでもいいぜ。オレ様には関係ねえ」
魔王は何かを知っているような素振りだが、クルスに関してそれ以上は突っ込んだ話はしない。そして、やはり話はエメラに振る。
「おい、魔獣女」
「はい、悪魔男さん」
先ほどと全く同じ前振りを繰り返す二人。決して名前では呼び合わないが、実は息ピッタリなのかもしれない。
魔王は玉座で足を組むと、今度はエメラを凝視する。魔王に見つめられるのは気味が悪いと、エメラはあからさまに嫌そうな顔をして返す。
「てめぇからアディの魔力を感じるぜ?」
「えっ……!?」
エメラは反射的に腹部を両手で押さえた。
アディの魔力を体に宿す事の意味は限られる。魅了の魔法は相手の体内に魔力を注ぐ事で発動するが、今は違う。
残る可能性はアディの魔力を持つ子を宿す事。つまり『懐妊』しかない。



