意識は遠い昔の夢から現在へと至る。
朝になってエメラは目を覚ました。
朝に同じベッドで起きる時には、二人の身体は毛布以外に何も纏っていないのが日常になっていた。
「おはようございます、アディ様」
先に目覚めたエメラは、隣であどけない顔をして眠り続けるアディの体をゆする。
本当は寝かせてあげたいが、そうはいかない。魔獣王としての仕事がある。
「うーん、エメ姉……」
ようやく瞼を開いたアディだが、いつもと様子が違う。寝惚けている顔ではない。
「アディ様? ご体調が悪いのですか?」
「うん、なんか疲れた……調子が良くない……」
笑顔のないアディの表情から仮病には見えない。
寝起きなのに疲れているとは……とも思うが、毎晩、魅了の魔法をかけられて激しく愛されるエメラの方こそが、身体的な疲労が取れないというものである。
それはさておき、アディは仮の魔獣王として慣れない仕事を続けている上に、魔法の習得にも励んでいる。日々の疲労が溜まっていてもおかしくはない。
「アディ様はもう少しお休み下さいませ。お仕事はわたくしにお任せ下さい」
素肌が冷えないようにと、エメラは起き上がってアディの肩まで毛布を被せる。
当然、今度はエメラの全身の肌が寒さに曝されるが気にしない。
「朝食はお部屋に運んで頂くように手配しておきますわね」
「うん、エメ姉、ありがと……」
「それまでに服は着ておいて下さいませね」
「うん……」
弱々しく素直に頷くアディが可愛らしくて、エメラは思わずアディの頬にキスをする。
こういう時だけは年下男子らしく甘えてくるアディが愛しい。
執務室に入ると、エメラは久しぶりに中央のデスクに座る。
最近はアディが座っている席なので、ここからの視界が懐かしく見える。
少し遅れて、出勤してきたクルスが執務室に入ってきた。
黒のスーツで仕事モードのクルスは、デスクに座るエメラを見た途端に、わざとらしく驚く。
「おはようございます。あれ? 今日はエメラ様が魔獣王なのですか?」
「おはようございます。アディ様は体調不良でお休み中ですわ。私たちだけでお仕事を始めましょう」
「そうなんですか。珍しい事もあるんですね」
クルスの顔は驚いているものの、なぜか言葉が淡々としていて感情がこもっていない。
朝になってエメラは目を覚ました。
朝に同じベッドで起きる時には、二人の身体は毛布以外に何も纏っていないのが日常になっていた。
「おはようございます、アディ様」
先に目覚めたエメラは、隣であどけない顔をして眠り続けるアディの体をゆする。
本当は寝かせてあげたいが、そうはいかない。魔獣王としての仕事がある。
「うーん、エメ姉……」
ようやく瞼を開いたアディだが、いつもと様子が違う。寝惚けている顔ではない。
「アディ様? ご体調が悪いのですか?」
「うん、なんか疲れた……調子が良くない……」
笑顔のないアディの表情から仮病には見えない。
寝起きなのに疲れているとは……とも思うが、毎晩、魅了の魔法をかけられて激しく愛されるエメラの方こそが、身体的な疲労が取れないというものである。
それはさておき、アディは仮の魔獣王として慣れない仕事を続けている上に、魔法の習得にも励んでいる。日々の疲労が溜まっていてもおかしくはない。
「アディ様はもう少しお休み下さいませ。お仕事はわたくしにお任せ下さい」
素肌が冷えないようにと、エメラは起き上がってアディの肩まで毛布を被せる。
当然、今度はエメラの全身の肌が寒さに曝されるが気にしない。
「朝食はお部屋に運んで頂くように手配しておきますわね」
「うん、エメ姉、ありがと……」
「それまでに服は着ておいて下さいませね」
「うん……」
弱々しく素直に頷くアディが可愛らしくて、エメラは思わずアディの頬にキスをする。
こういう時だけは年下男子らしく甘えてくるアディが愛しい。
執務室に入ると、エメラは久しぶりに中央のデスクに座る。
最近はアディが座っている席なので、ここからの視界が懐かしく見える。
少し遅れて、出勤してきたクルスが執務室に入ってきた。
黒のスーツで仕事モードのクルスは、デスクに座るエメラを見た途端に、わざとらしく驚く。
「おはようございます。あれ? 今日はエメラ様が魔獣王なのですか?」
「おはようございます。アディ様は体調不良でお休み中ですわ。私たちだけでお仕事を始めましょう」
「そうなんですか。珍しい事もあるんですね」
クルスの顔は驚いているものの、なぜか言葉が淡々としていて感情がこもっていない。



