魔獣王の側近は、ヤンデレ王子の狂愛から逃れられない

 悲痛なアディを目の前にしたエメラは、今までにない罪の意識の重さに息が詰まる。
 こんなに苦しそうなアディは見た事がない。いや、今まで決して見せなかった。

「わたくしはアディ様の全てを受け入れます。今後もどうぞ、わたくしに魅了(チャーム)の魔法をお使い下さいませ」

 エメラは、アディに魅了(チャーム)をかけられても、何をされようとも、一度も拒絶をした事はない。嫌悪など感じた事もない。仕事に支障が出て困る事はあるが、そんなアディを否定もしない。
 ……それが、アディの愛なのだから。

「わたくしはアディ様を愛しております。どうか貴方の愛で満たして下さい」

 魅了(チャーム)の魔法を使わずに愛してほしいのではなく、魅了(チャーム)の魔法という名の愛を受け入れる。それがアディの愛し方で、エメラの愛され方なのだと気付いたから。

 過去の恋愛の未練に、よそ見もできないくらいに、アディの愛で身も心も埋め尽くされたい。他力本願のようにそれをアディに願う行為は、更なる罪なのだろうか?

「エメ姉、愛してるよ。僕から離れないで、僕だけを見てよ」
「……はい。もちろんですわ」

 それがアディの愛の形ならば。その『狂愛』ごとアディを愛そうと……そう思った。


 だが、そんなアディの狂愛は、すでにエメラの想像を遥かに超えていた。
 間もなくエメラは、それを思い知る事になる。