飛行するクルスの背に乗って風を受けていると、エメラの身体は自然と冷やされて落ち着きを取り戻してきた。
数十分後、魔界の魔王の城が見えてくる。
城門の手前の広場に魔獣の姿のクルスが降り立つと、そこでは二人の到着を待っていた人物がいた。
エメラはクルスの背から降りて、その人物に歩み寄る。
「ディア様……! わざわざお出迎え頂いて感謝致しますわ」
エメラが思わず魅了とは別の意味で頬を赤らめる相手、魔獣王ディアだ。
「エメラさん、お待ちしていました。予定より遅いので心配しました」
「申し訳ありません……」
アディにかけられた魅了のせいだとは言えない。
ディアはアディの父であり、現在の正式な魔獣王。魔界では魔王の側近である。見た目は20代、軍服スーツに身を包んだイケメンの紳士だ。
エメラの横に、人の姿に変身したクルスが並んで立った。すかさずエメラは姿勢を正し、隣のクルスをディアに紹介する。
「こちらはクルスさんです。アディ様の新しい側近ですわ」
クルスはディアに向かって一礼する。
「初めまして、魔獣王ディア様。僕はクルスと申します。アディ様の側近を努めさせて頂いております。よろしくお願い致します」
エメラが感心するほどに見事な自己紹介だ。
さらに魔獣王を目の前にしているのに緊張している様子はない。だが、その落ち着きが逆に違和感にも思えた。
ディアも何かを感じたのか、不思議そうにしてクルスの顔を見つめている。
「クルスさん……以前、どこかでお会いしましたか?」
クルスは動じずに微笑むが、その笑顔にも不自然な含みがある。
「いいえ、お初にお目にかかります」
「そうですか……。クルスさん、今後もアディをよろしくお願いしますね」
「はい、お任せ下さい」
クルスはアディに容姿が似ているから既視感があるのかもしれないと、エメラは特に不思議に思わなかった。
次にディアはエメラの異変にも気付いて視線を向ける。
「エメラさん、大丈夫ですか? 熱があるように見えますが」
「えっ……!? だ、大丈夫ですわ……!」
さすがにディアは鋭い。見ただけでエメラの発熱を見抜いてしまった。だが、ディアもやはり病的な意味での発熱を心配していると思われる。
ディアに熱を指摘された途端に、再びエメラの身体が熱を帯びてきた。
忘れていた魅了の効果が再発したのか、ディアに対する熱なのか分からない。
数十分後、魔界の魔王の城が見えてくる。
城門の手前の広場に魔獣の姿のクルスが降り立つと、そこでは二人の到着を待っていた人物がいた。
エメラはクルスの背から降りて、その人物に歩み寄る。
「ディア様……! わざわざお出迎え頂いて感謝致しますわ」
エメラが思わず魅了とは別の意味で頬を赤らめる相手、魔獣王ディアだ。
「エメラさん、お待ちしていました。予定より遅いので心配しました」
「申し訳ありません……」
アディにかけられた魅了のせいだとは言えない。
ディアはアディの父であり、現在の正式な魔獣王。魔界では魔王の側近である。見た目は20代、軍服スーツに身を包んだイケメンの紳士だ。
エメラの横に、人の姿に変身したクルスが並んで立った。すかさずエメラは姿勢を正し、隣のクルスをディアに紹介する。
「こちらはクルスさんです。アディ様の新しい側近ですわ」
クルスはディアに向かって一礼する。
「初めまして、魔獣王ディア様。僕はクルスと申します。アディ様の側近を努めさせて頂いております。よろしくお願い致します」
エメラが感心するほどに見事な自己紹介だ。
さらに魔獣王を目の前にしているのに緊張している様子はない。だが、その落ち着きが逆に違和感にも思えた。
ディアも何かを感じたのか、不思議そうにしてクルスの顔を見つめている。
「クルスさん……以前、どこかでお会いしましたか?」
クルスは動じずに微笑むが、その笑顔にも不自然な含みがある。
「いいえ、お初にお目にかかります」
「そうですか……。クルスさん、今後もアディをよろしくお願いしますね」
「はい、お任せ下さい」
クルスはアディに容姿が似ているから既視感があるのかもしれないと、エメラは特に不思議に思わなかった。
次にディアはエメラの異変にも気付いて視線を向ける。
「エメラさん、大丈夫ですか? 熱があるように見えますが」
「えっ……!? だ、大丈夫ですわ……!」
さすがにディアは鋭い。見ただけでエメラの発熱を見抜いてしまった。だが、ディアもやはり病的な意味での発熱を心配していると思われる。
ディアに熱を指摘された途端に、再びエメラの身体が熱を帯びてきた。
忘れていた魅了の効果が再発したのか、ディアに対する熱なのか分からない。



