城の図書館には無数の本棚が並んでいる。
部屋そのものも広く、向こう側の壁が霞んで見えない程だ。
クルスは、ぐるりと周囲を見渡して驚きの声を上げる。
「うわぁ、すごい本の数ですね」
「そうですわね。この図書館の本を読み尽くしたのはディア様くらいですわ」
「ディア様、ですか……」
魔獣王ディア、つまりアディの父。
当然ながら、魔獣界の住民でその存在を知らぬ者はいない。
そしてクルスは、エメラがディアの事を話す時に滲ませる感情は単なる尊敬ではない事にも気付いている。
エメラは図書館の端にある本棚の方へと歩いていく。その本棚だけが他と色が違って、特別な重い雰囲気が漂っている。
「この本棚の魔法書は特別ですの。異世界では禁書扱いになる魔法の使い方も書かれていますわ」
禁書とは、法律によって使用が禁止されている魔法の使い方が書かれた本だ。だが当然、世界によって法律は違う。
クルスは禁書の魔法について興味を示した。
「例えば、どんな魔法ですか?」
「魅了、結界、封印、ですわね』
それらは魔獣界での使用は法律違反にならない。そもそも高度な魔法なので、使い方を知ったところで誰にでも使える訳ではない。
だがクルスは真剣な眼差しで、その禁断の書物を見つめている。
「エメラ様はその魔法を全部使えるんですか?」
「はい。魔獣界を治める者として当然ですわ」
「さすがですね」
エメラは魔獣王ディアの代わりに何百年も一人で魔獣界を治めてきた。王と同種族の『バードッグ』であり、同等の魔力を持つからこそ全ての魔法を習得できた。
そういう意味ではアディはもちろん、同種族のクルスも習得できる可能性はある。
だがクルスは気落ちした様子で小さく呟いた。
「どれも僕には扱えなさそうな魔法ですね」
その言葉には自虐的な感情がこもっていたので、思わずエメラはクルスの思惑を忘れて励まそうとした。
「そんな事ないですわ。魅了の魔法でしたら一般市民でも使えますわよ」
そこまで言ってからエメラは自覚したが、もう遅い。クルス相手に、これは失言だったと……。
部屋そのものも広く、向こう側の壁が霞んで見えない程だ。
クルスは、ぐるりと周囲を見渡して驚きの声を上げる。
「うわぁ、すごい本の数ですね」
「そうですわね。この図書館の本を読み尽くしたのはディア様くらいですわ」
「ディア様、ですか……」
魔獣王ディア、つまりアディの父。
当然ながら、魔獣界の住民でその存在を知らぬ者はいない。
そしてクルスは、エメラがディアの事を話す時に滲ませる感情は単なる尊敬ではない事にも気付いている。
エメラは図書館の端にある本棚の方へと歩いていく。その本棚だけが他と色が違って、特別な重い雰囲気が漂っている。
「この本棚の魔法書は特別ですの。異世界では禁書扱いになる魔法の使い方も書かれていますわ」
禁書とは、法律によって使用が禁止されている魔法の使い方が書かれた本だ。だが当然、世界によって法律は違う。
クルスは禁書の魔法について興味を示した。
「例えば、どんな魔法ですか?」
「魅了、結界、封印、ですわね』
それらは魔獣界での使用は法律違反にならない。そもそも高度な魔法なので、使い方を知ったところで誰にでも使える訳ではない。
だがクルスは真剣な眼差しで、その禁断の書物を見つめている。
「エメラ様はその魔法を全部使えるんですか?」
「はい。魔獣界を治める者として当然ですわ」
「さすがですね」
エメラは魔獣王ディアの代わりに何百年も一人で魔獣界を治めてきた。王と同種族の『バードッグ』であり、同等の魔力を持つからこそ全ての魔法を習得できた。
そういう意味ではアディはもちろん、同種族のクルスも習得できる可能性はある。
だがクルスは気落ちした様子で小さく呟いた。
「どれも僕には扱えなさそうな魔法ですね」
その言葉には自虐的な感情がこもっていたので、思わずエメラはクルスの思惑を忘れて励まそうとした。
「そんな事ないですわ。魅了の魔法でしたら一般市民でも使えますわよ」
そこまで言ってからエメラは自覚したが、もう遅い。クルス相手に、これは失言だったと……。



