とりあえずクルスは明日からの出勤になったが、なぜか面接が終わってもすぐに帰らない。
予定よりも早く面接が終わったので、執務室でアディと世間話で盛り上がっているのだ。似た者どうしで気が合うらしく、すでに仲良くなっている。
「へぇ、クルスくん、好きな人がいるんだ。なんなら相談に乗るよ。どんな人?」
エメラは退室した後の執務室で、男二人で恋バナである。
その時、執務室にエメラが入ってきた。紅茶の入ったティーカップを乗せたトレーを手に持って。
クルスは特に気にせずに話を続ける。
「はい、年上で同じ『バードッグ』なんですけど、美しくて強くて、僕は何度も助けて頂いたんです」
クルスの前にティーカップを置いたエメラの動きが止まる。クルスを見ると、相変わらず爽やかな笑顔で笑い返してくる。
(クルスさんは一体、何を考えていますの?)
クルスの好きな人とは間違いなくエメラの事だ。だが、わざと名前は出さずにアディに恋愛相談をしている。エメラがアディと婚約している事実を知っても、まるで気にしていないようだ。
当然ながらアディは、クルスの想い人がエメラである事に気付かない。
「あぁ分かるよ、エメ姉みたいなタイプだね。ストレートに求婚するのが一番だよ」
エメラはアディの前にティーカップを置くと、今度はアディと目を合わせる。アディは爽やかにウインクをしてきた。相変わらずキザな男前である。
確かにアディは恋人という関係すら飛ばして、成人したと同時に求婚してきた。それも強引に拒否権もなく。それでも、すでに両思いだったからこそ婚約は成立した。
しかしクルスは少し暗い顔をした。
「ですが、その人には婚約者がいるんです」
アディと目を合わせていたエメラは、ハッとして金色の瞳を見開く。
まずい、ここで動揺してはいけない。鋭いアディはエメラの少しの変化にも気付いてしまう。クルスは一体、どこまでエメラを揺さぶるのだろうか。
この場から逃げるように立ち去ろうとしたエメラの片腕をアディが掴んだ。
「え、アディ様っ……」
強く引っ張られてバランスを失い倒れたエメラは、背中から抱かれる形でアディの膝の上に座らされてしまった。しっかりと両腕で腰をホールドされて逃げられない。
エメラの長い深緑の髪に頬ずりして愛でながらも、アディの視線と言葉はクルスに向けられている。
「そっか、それは難しい恋だね。でも僕だったら奪っちゃうな」
まさかとは思うが、アディはクルスの思惑に気付いていて、あえて見せつけているのだろうか。
いや、そうだとしたらクルスを側近に採用するはずがない。
予定よりも早く面接が終わったので、執務室でアディと世間話で盛り上がっているのだ。似た者どうしで気が合うらしく、すでに仲良くなっている。
「へぇ、クルスくん、好きな人がいるんだ。なんなら相談に乗るよ。どんな人?」
エメラは退室した後の執務室で、男二人で恋バナである。
その時、執務室にエメラが入ってきた。紅茶の入ったティーカップを乗せたトレーを手に持って。
クルスは特に気にせずに話を続ける。
「はい、年上で同じ『バードッグ』なんですけど、美しくて強くて、僕は何度も助けて頂いたんです」
クルスの前にティーカップを置いたエメラの動きが止まる。クルスを見ると、相変わらず爽やかな笑顔で笑い返してくる。
(クルスさんは一体、何を考えていますの?)
クルスの好きな人とは間違いなくエメラの事だ。だが、わざと名前は出さずにアディに恋愛相談をしている。エメラがアディと婚約している事実を知っても、まるで気にしていないようだ。
当然ながらアディは、クルスの想い人がエメラである事に気付かない。
「あぁ分かるよ、エメ姉みたいなタイプだね。ストレートに求婚するのが一番だよ」
エメラはアディの前にティーカップを置くと、今度はアディと目を合わせる。アディは爽やかにウインクをしてきた。相変わらずキザな男前である。
確かにアディは恋人という関係すら飛ばして、成人したと同時に求婚してきた。それも強引に拒否権もなく。それでも、すでに両思いだったからこそ婚約は成立した。
しかしクルスは少し暗い顔をした。
「ですが、その人には婚約者がいるんです」
アディと目を合わせていたエメラは、ハッとして金色の瞳を見開く。
まずい、ここで動揺してはいけない。鋭いアディはエメラの少しの変化にも気付いてしまう。クルスは一体、どこまでエメラを揺さぶるのだろうか。
この場から逃げるように立ち去ろうとしたエメラの片腕をアディが掴んだ。
「え、アディ様っ……」
強く引っ張られてバランスを失い倒れたエメラは、背中から抱かれる形でアディの膝の上に座らされてしまった。しっかりと両腕で腰をホールドされて逃げられない。
エメラの長い深緑の髪に頬ずりして愛でながらも、アディの視線と言葉はクルスに向けられている。
「そっか、それは難しい恋だね。でも僕だったら奪っちゃうな」
まさかとは思うが、アディはクルスの思惑に気付いていて、あえて見せつけているのだろうか。
いや、そうだとしたらクルスを側近に採用するはずがない。



