アディはデスクの上に用意されたクルスの履歴書を見ながら面接を進める。
「へぇ、クルスくんは僕たちと同じ『バードッグ』なんだね。じゃあ、側近を志願した理由を聞かせてよ」
アディの隣で平然を装っているエメラだが、内心は気が気じゃない。魔獣の本能で胸騒ぎを感じているのだ。クルスの思惑もだが、アディが彼を恋敵だと知った時が恐ろしい。
「はい。アディ様は僕の憧れの存在であり、心から尊敬しているからです」
「え、そんなに僕を? もっと詳しく教えてよ」
アディは調子に乗って、さらに褒め言葉を引き出そうとしている。
「強くて聡明で容姿端麗なアディ様に少しでも近付きたくて……僕、実は髪型とかも真似したんです」
同種族だから容姿が似ているのは当然だが、髪型や口調などもアディに似せていたのだ。
それにしたって、どうもわざとらしいとエメラは疑ってしまう。クルスの狙いはアディではなく、エメラのはずだからだ。
すっかり気分が良くなったアディは、隣に立つエメラに目配せをする。
「エメ姉。どうかな、クルスくんは」
その口調は、『側近に採用してもいいよね』という同意を求めるニュアンスに聞こえる。
しかしエメラはクルスに対する不信感が拭えない。そこで、少し大胆な方法でクルスを試してみる事にした。
エメラはデスクに座るアディよりも一歩前に出る。魔獣王にも負けない威厳の立ち姿だ。
「クルスさん、初めまして。わたくしはアディ様の婚約者、エメラと申しますわ」
エメラは『婚約者』を特に強調して名乗った。さらに、わざと初対面であるかのような口ぶりで。何かを言われても覚えていないと言えばいいだけ。
もしあの日、クルスがエメラの胸元のペンダントを見ていたのなら、エメラは婚約していると気付いているはずだ。
クルスは全く動じている様子はない。微笑を絶やさずに変わらぬ口調で答える。
「はい。エメラ様の事も前々から全て存じ上げてます」
だが、それはエメラにとっては予想外な答えであり、彼の真意が謎めいてきた。
(知ってますの!? なら、なんで……)
クルスは、エメラが婚約していると知っていて求婚してきた。それを断られたにも関わらず、今またこうして近付いてくる。
エメラの婚約者はアディなのだ。敵う相手ではないのは分かっているはず。
「へぇ、クルスくんは僕たちと同じ『バードッグ』なんだね。じゃあ、側近を志願した理由を聞かせてよ」
アディの隣で平然を装っているエメラだが、内心は気が気じゃない。魔獣の本能で胸騒ぎを感じているのだ。クルスの思惑もだが、アディが彼を恋敵だと知った時が恐ろしい。
「はい。アディ様は僕の憧れの存在であり、心から尊敬しているからです」
「え、そんなに僕を? もっと詳しく教えてよ」
アディは調子に乗って、さらに褒め言葉を引き出そうとしている。
「強くて聡明で容姿端麗なアディ様に少しでも近付きたくて……僕、実は髪型とかも真似したんです」
同種族だから容姿が似ているのは当然だが、髪型や口調などもアディに似せていたのだ。
それにしたって、どうもわざとらしいとエメラは疑ってしまう。クルスの狙いはアディではなく、エメラのはずだからだ。
すっかり気分が良くなったアディは、隣に立つエメラに目配せをする。
「エメ姉。どうかな、クルスくんは」
その口調は、『側近に採用してもいいよね』という同意を求めるニュアンスに聞こえる。
しかしエメラはクルスに対する不信感が拭えない。そこで、少し大胆な方法でクルスを試してみる事にした。
エメラはデスクに座るアディよりも一歩前に出る。魔獣王にも負けない威厳の立ち姿だ。
「クルスさん、初めまして。わたくしはアディ様の婚約者、エメラと申しますわ」
エメラは『婚約者』を特に強調して名乗った。さらに、わざと初対面であるかのような口ぶりで。何かを言われても覚えていないと言えばいいだけ。
もしあの日、クルスがエメラの胸元のペンダントを見ていたのなら、エメラは婚約していると気付いているはずだ。
クルスは全く動じている様子はない。微笑を絶やさずに変わらぬ口調で答える。
「はい。エメラ様の事も前々から全て存じ上げてます」
だが、それはエメラにとっては予想外な答えであり、彼の真意が謎めいてきた。
(知ってますの!? なら、なんで……)
クルスは、エメラが婚約していると知っていて求婚してきた。それを断られたにも関わらず、今またこうして近付いてくる。
エメラの婚約者はアディなのだ。敵う相手ではないのは分かっているはず。



