待ちに待った夏休みに入ったものの、小学生が一人で行動を許可されている場所など、かなり限られている。

せいぜい、市民プール、公園、図書館、駄菓子屋、博物館や美術館、友人の家ぐらいのもの。

「ねーねー、お姉ちゃん。何処か遊びに行こうよ」

そう言ったが、ケバケバにメイクした姉は私をジロリと見下ろし、

「いい?私は大学生で、あんたの倍も人生経験を積んだ立派な大人なの。ドライブも、お酒も、タバコも、ディスコも、パーマも、ピアスも、朝帰りも許される身。小学生のあんたには何一つ許されない。そんな子供と何処へ遊びに行くと言うの?」

「映画館とか。さよならモンペールが観たいな」

「あんたには14才が大人に見えるんだろうけど、私はティーンの映画なんてごめんだわ」

「ふん。大学生だって偉そうにしてるけど、九九も言えなきゃ、県庁所在地も知らないくせに」

「何か言った!?」