絶句するジェイドに、アニスは震える声で続ける。

「半年前、ジェイド様ご危篤の報せを受けたお嬢様は、禁忌魔法をお使いになったのです。旦那様にも奥様にも何の相談もせず、私にも、何も言わず……ジェイド様の命を救おうと、"自身の最も大切なもの"と引き換えに、ジェイド様の回復を祈られたのです」
「……っ」

 瞬間、ジェイドは全てを理解した。
 魔法医師団にすら「もう助からない」と匙を投げられた自分が、どうして回復することができたのか。
 それは、リディアが代償を支払ったからだったのだ。

「お嬢様は、旦那様と奥様宛てに、手紙を残しておられました。それを最初に見つけたのは、私です。旦那様からは固く口留めされましたが、ジェイド様にはお知らせしなければと思い、こっそり複写したものをお持ちしましました。こう見えて私、複写魔法が大の得意なんですよ」

 アニスは涙ぐみながら、一通の手紙を差し出す。
 それを受け取り中を開くと、リディアの柔らかな字で、こう綴られていた。