半年前、ジェイドは奇跡的に一命を取り留めた。

 後遺症で身体が思うように動かせない中、遠征先の街で懸命にリハビリをし、半年かけて、こうして馬に乗れるほどまで回復した。

 けれどその間、一度もリディアからの手紙は届かなかった。

 自分が重傷を負った報せは届いているはずなのに、何の音沙汰もなく、それどころか、手紙を送っても返事はない。

 理由がわからず、このままでは埒が明かないと思ったジェイドが、騎士団長である父を問い詰めると、父はようやく、この書状を出してきた。

「お前とリディア嬢の婚約は破棄された。彼女のことは忘れるように」という、信じられない通告と共に。
 
 ジェイドは憤った。
 理由を聞いても、何一つ答えようとしない父に失望し、静止も聞かず遠征先を飛び出した。

 そして、昼も夜もなく馬を駆け続け、本来なら二週間かかるところ、十日でリディアの屋敷に辿り着いたのである。