それから半年が過ぎた、ある夏の日の早朝――。

 馬蹄の音が、伯爵家の門前に響いた。


「……リディ!」

 ジェイド・マクラーレンは鞍から飛び降りると、震える手で外套の内側をまさぐる。

 そこには、父から渡された一通の書状があった。
 中には、リディアとの婚約破棄が成立した、という内容が記されている。


(リディ――君に、いったい何があったんだ?)