内心、心臓が飛び出そうなほどの恥ずかしさを覚えながらジェイドを見つめる。
すると、ジェイドは真顔で即答した。
「当然だ。俺は君を愛している」
「……っ、……記憶が、なくても……?」
「当たり前だろう! 記憶のあるなしは関係ない。君は、君だ」
「なら、わたしの言うこと聞けるでしょう? 禁忌魔法なんて、絶対にダメ」
リディアは言い聞かせる。
けれど、ジェイドはやや逡巡した末、こう言うのだ。
「そうしたいのは山々だが……。君の父上に、君の記憶を取り戻すと約束してしまったんだ。だから……」
リディアは呆れた。
まさか、自分よりも父親との約束の方が大事だというのか。――一度はそう思ったものの、いつかのアニスの『騎士は契約で、嘘をつけないらしいですよ』との言葉を思い出し、そっと息を吐く。
「その条件なら、撤回されました」
「……え?」
「お父さまが、わたしたちの結婚をお許し下さったの。だから……」
刹那、ジェイドの瞳が一瞬にして輝いた。
「それを早く言え!」
叫ぶようにそう言って、勢いよく上体を起こす。
「そんなに急に動いたら――」
危ないわ、と言いかけたリディアの身体を、ぐいと引き寄せた。
「今の話を聞いたら元気になった。いや、違うな。君の回復魔法のおかげか。とにかく、もう問題ない」
「……っ、そんなはず……!」
「本当だ。確かめてみるか?」
「確かめるって……どうやって……」
先ほどまでの態度とは打って変わり、余裕気な笑みを浮かべたジェイドに、リディアはカアッと頬を染めた。
(……っ、何よ、これ……。ジェイド様のこんな顔、見たことないわ……!)
混乱するリディアに、ジェイドはそっと顔を寄せる。
そして、甘く囁いた。
「こうやって確かめるんだ、リディ」
刹那、唇に柔らかな何かが触れたと思ったら、そのまま一気に塞がれる。
それは、二人の心に新たな春が訪れた瞬間だった。



