「……嘘……嘘よ。だってジェイドは、"必ず戻る"って。"戻ったら式を挙げよう"って、そう言ってくれたもの!」


 三年前、遠征出立の前夜、ジェイドは確かにこう言った。

「必ず戻る。戻ったら式を挙げよう。君の花嫁姿は、きっと美しいだろうな。今から楽しみだ」と。

 あの日の言葉は、リディアの未来そのものだった。
 彼となら、どんな困難も乗り越えていける――そう信じていた。

 そのジェイドが、毒矢で危篤。

 そんなこと、受け入れられるはずがない。


「お前の気持ちは分かる。ジェイドのことを大切に思っているのは、私たちも同じなのだから」
「同じ? 同じなんかじゃないわ! 馬鹿なこと言わないで!」
「……リディア」
「わたしが参ります! ジェイドの元へ行かせてください。わたしの魔力なら、きっと……!」

 リディアには魔法の才があった。特に回復魔法に長けている。
 ジェイドの父である騎士団長が、リディアを息子の妻にと望んだのは、それが理由でもあった。