私に恋を教えてくれませんか?

結菜が見ていたのは、天ヶ瀬 蒼 芸能活動休止のニュースだった
(あんなに順調に売れてたのに、どうして……)


○大学の教室・昼過ぎ

オリエンテーションが終わり、周りの大学生が徐々にいなくなる。
机に突っ伏す結菜。
結菜モノ(今朝のことで頭がいっぱいで全然頭に入らなかった)
結菜「うわぁーん、私の夢はどうなるのよー!?」
華恋「ご愁傷様。ねえ、今日新歓行く?」
結菜「う、うっ、明日にする〜」
華恋「よっし! なら、いい所に連れて行ってあげる! いい加減、新しい恋で過去なんて忘れなさい!」
結菜「え?」


○相席ラウンジの外・夕方

看板・外観のビルを見ながら。
結菜「な、何ここ!?」
華恋「バ先の先輩に教えて貰ったの! 高校卒業したんだから試しに行ってみようよ」
結菜「え!? こ、こここ怖いんだけど!?」
華恋「まあまあ、取材だと思って」
結菜「華恋ちゃん、自分が行きたいだけでしょ!?」
華恋「バレた? ねえ、お願い! 私も彼氏がほしいの! 先輩彼持ちで一緒に行けないし、結菜だけが頼りなんだよぉ」
結菜「う……分かった、よ……」


○相席ラウンジ店内

薄暗くネオンが眩しいクラブのような雰囲気、ダーツがあり、全席ソファ席。
半個室のような席に案内される。
ソフドリをタブレットで頼む二人。結菜は緊張してガクガク震えている。
結菜モノ(つい誘いを断れなくて来ちゃったけど、場違い過ぎてどうしよう〜)
結菜「華恋ちゃん、やっぱり帰……」
店員「これから相席になります」
結菜モノ(ひええええっっ)
震え上がる結菜、ワクワク胸をときめかせる華恋
席にやってきたのは、明らかに年上のスーツ姿の中年男性二人組。
おじさんA「若い女の子だ〜! 大学生?」
結菜「ひっ……」
結菜・華恋モノ(無理無理無理無理無理!!)
おじさんB「へえ、彼氏が欲しくて来たの?」
おじさんA「僕、立候補しちゃおうかな〜」
おじさんBが結菜の肩に手を回そうとする。
結菜モノ(やだ……)

目をぎゅっと瞑ったその瞬間。がしっ、とおじさんの腕を掴む蒼の手。
キャップとサングラスとマスクをしている二人組の大学生が救世主のように立っていた。
※変装中の蒼と瑞稀
※蒼はピアスをばちばちに開けて、銀髪になっている。

結菜・華恋モノ(誰?)
結菜モノ(でも、なんだか見覚えのある、ような……)
蒼「ボディタッチ禁止ですよ。おじさん」
瑞稀「すみませ〜ん、チェンジお願いしまーす!」

慌てて駆けつける店員。
店員「申し訳ありません、お客様。席移動をお願いできますか」
突然の事態に困惑しつつも、おじさんたちは「なんなんだ」「高い金払ってるのに」などと、ぶつぶつ言いながら席を立つ。

華恋「結菜ごめんねぇ、まさかこんな目に遭うとは思わなくってぇ……」
わんわん泣く華恋を慰めながら、大学生二人を見る。
結菜「あの、助けてくれて……ありがとうございました」
蒼「こんな危ないとこ来るなら、自衛方法くらい身に付けろバカ」
結菜モノ(この声……まさか)
瑞稀「女の子に向かって毒舌吐くな」蒼の頭にチョップ
蒼「帰っていいっすか」
瑞稀「こら、折角連れて来てやったのに。先輩に付き合え、蒼」
結菜モノ(蒼くん!?)
結菜「っ」目を見開く
結菜モノ(銀髪!? それに、ぴ、ピアスがいっぱい!?)
結菜モノ(ほ、本当に蒼くんなの!?)
瑞稀「俺たちが相席でいいかな?」サングラスをずらし、人差し指を口に当て、シーというポーズをする
華恋「中野 瑞稀くん!? と、王子じゃん!?」口に両手を当てながら小声で叫ぶ
蒼「チッ」
華恋「怖、本当にキャラ違うじゃん」ぎょっ

店員さんが来て、相席スタート。
男たちは変装を解いて、男女男女で座る。
瑞稀はインフルエンサーで、蒼と同じ恋リアに出ていた。
瑞稀「蒼と高校の同級生だったんだって?」
華恋「はい! あの私、恋リアで見てました! SNSも全部見てて……」
瑞稀「ほんと? 嬉しいなあ」

盛り上がる華恋と瑞稀の隣で、地獄のような沈黙の結菜と蒼。
結菜「あの……その……ひ、久しぶり、だね……っ」
蒼「……」
結菜モノ(ひぃん、なんか喋ってぇ!?)
蒼「……あのさ」
結菜「っひゃい!?」突然びっくり
蒼「……ごめん。あの夢、叶えるまでにまだかかるかも」
結菜「っ」
蒼「――でも、必ず叶えるから」
結菜「……ありがとう。私も頑張る」
蒼「で、結菜は? 小説」
結菜「うーん……デビュー作っきり、次を出せてなくて……」
蒼「え!? すげぇじゃん!! そっか、結菜も頑張ってたんだな」
結菜「いやぁ。それが全然すごくないんだよ。売れなかったし……」苦笑い
蒼「俺には結菜が眩しいよ」

喋りながら、心の中で変わった蒼を想う。
結菜モノ(蒼くん)
結菜モノ(どうして髪を派手にしてピアスを開けたの?)
結菜モノ(どうして海の底みたいな暗い目をしているの?)
結菜モノ(どうして事務所辞めて芸能活動休止したの?)
結菜モノ(――聞きたい。でも言葉に出したら、もう二度と会えないような気がして……)

華恋「結菜ー! ごめん、私たち先抜けるね♡」
結菜「え?」
瑞稀「蒼ー! 会計は済ませておくから! 元気出せよな!」
結菜「は?」
華恋・瑞稀「「じゃあまたね〜」」笑顔で手を振る
蒼「チッ、あいつら……」
蒼「結菜、一緒に出るぞ」
結菜「え?」
結菜の手を引っ張る蒼


○カラオケ・室内

テーブルに肘を付いて、偉そうに結菜を見つめる蒼。
蒼「なんか歌え」
結菜「え!? プロの前で!?」
蒼「いいから歌え」
結菜モノ(何この状況――!?)
結菜は半泣きで曲を入れる。
イントロ流れる。
蒼「なんで俺の曲なんだよ……」
結菜「え? 大好きだから」笑顔
蒼「っ……本当、あんたは……」照れ顔

上手に歌う結菜。
それをプロの眼差しで見つめる蒼。
一曲歌い終わったけ何かを考え込む無言の蒼にビクビクする結菜。
結菜「あ、あの……」
結菜モノ(怖い怖い怖い)
結菜モノ(やっぱり本人の前で失礼だったかな!?)
蒼は考えが纏まり、結菜にジリジリ迫りる
蒼「結菜」
結菜モノ(ひいいい怒られるううう)
途端に、結菜の手を取る蒼
蒼「俺の歌姫になってくれ」
結菜「へ?」