…はぁ、めんどくさい。
ねぇ、君はそう思わない?
いつもの窓際の席に座り、カバンに入れてきた
ノートを広げながら心の中で問いかける。
上手くなりたくて練習したペン回しは
未だに出来ず、カッコつけて回してみるけど
大きな音を立てて机に落ちた。
私に視線が集まるが、気にしない。
気にしてなんかいられない。
だってもっと気になることが
目の前にあるんだから。

彼を観察・記録するって決めたけど
何から始めえれば良いの?
第一名前も学校も学年も知らない
これじゃ私はただのストーカーじゃん。
分かっていることなんて
毎日図書館に来てはいるものの
基本中には入らず、中庭の様な所に
腰を下ろし本を読んでいることくらい。
その本は一体何?
なんで中に入ってこないの?
どうして直射日光を全身に浴びながら
そんな涼しい表情をしているの?
考えながら回すペンは
ことごとく机の上に落ち、
その度に大きな音を立てる。

「流石にか」

何度目かのペンの落下と共に
私は荷物をまとめる。
別に視線に耐えられなくなった訳じゃない
ただかれこれ数時間、全く動きがないもんだから
このまま居ても時間の無駄だって思っただけ。
じゃぁ時間の無駄って何だろうね。
私は自分でやるって決めた事を
やっているのに、それが無駄?
だったら人間全てが無駄じゃない?

静かに近づいてきた司書のおばさんに
軽い会釈をして、この場を去る。
すれ違いざま言われた

「遅いわよ」

という言葉は聞こえなかったことにしよう。
そうじゃないと言い返してしまいそうだから。
その遅いは出て行くのが?
それとも貴女の存在に気がつくのが?

「本当遠回りするなぁ」

それは私自身に投げ掛けた言葉か
それともあのおばさんに投げ掛けたか。
もやもやした気持ちのまま、私は
初日を終えたのだった。