彼を見たのは別にその日が初めてではなかった。
学校は違うのか、普段見ることはなかったけど
何度か図書館で見たことがあったし
橋の上で独り黄昏る姿を見たことがあった。
その度に、あぁなんて愚かで惨めな人だろう
と思っていた。
いつも猫背で下を向いて。
自分は不幸です、自分は何も出来ません。
そう体現しているようで嫌だった。
やる事やってその感じ？
世の中全て敵だって思ってる？
どうせ赤の他人だし、どうでも良いけど
何も努力してなさそうで腹が立つ。
普段だったらそんな事も思いもしないけど
あまりにも見かける回数が多くて
嫌でも記憶に残ってしまうから。
気がついたら目で追い、目線を送る様になっていて。

自分の変化に正直嫌気がさして
やめよう、やめようと思っても
どうしても気になってしまう。
時間の無駄、脳のキャパの無駄
辞める理由をいくら並べても
何故か終わらないそれに
いっそ満足するまで観察してやると決めた。
集中しちゃえばどうせ途中で飽きるだろうし
それで辞めれるなら良い。
これを将来振り返る事も、後悔することもない
ただの人生の中での暇つぶし。
どうせ毎日図書館に来てるんだから
やることを見つけたってバチは当たらないどころか
何かをやっていれば
図書館にいる名目にもなる。

…あぁ、なら記録をつけよう。
記録なら見返しても問題ないし、
過去のことが書いてあっても問題ないから。
私は自分の心に話を付け
新品のノートに『記録』とだけ書き
カバンに仕舞い込んだ。