私は日記が嫌いだ。
わざわざその日のことを書き、未来に残す。
この必要性が全く持って理解出来ないから。
楽しいことだから残しておきたい?
後悔したから反省として覚えておきたい?
意味がわからない。
そんな過去をいちいち振り返っているから
人間は愚かな生き物なんだ。
過去は過去で、もう戻ることは出来ないのに
それを活かそうだなんておこがましいにも程がある。
それが出来たら世の中おかしな事には
なっていないんだよね。
結局今を生きるので精一杯の私たちが
過去を振り返ることなんてどうせ何十年後。
笑い話になってからなのに…
そう、思っていた…のになぁ。

あの日、あの時。
彼に出会ったことが私の人生を変えた。
こんな出会いが本当にあるなんて
今でも夢だと思ってしまうけれど
人生は小説より奇なり、とはこれこのこと。
まさか私がにっ…いや
あれを日記というのは違う気がする。
文字にするなら『記録』
そう。
記録を取ることになるなって思ってもいなかったから。
この記録が私を新たな道になるなんて
思ってもいなかったから。

ねぇ。
もしちゃんと話し合えてたら
君という存在に向き合っていたら
今私の隣に居たのは…
あぁ違う。過去は過去
もうどうしようもない。
あの時の記録を私はまだ日記と認めない
それを認めたら、君との思い出が全て
違うものになってしまう気がするから。
あの時の記録を私はまだ手放していない
これを手放したら、君の存在が全て
消えてしまうかもしれないから。

これは私と彼の
ひと夏の記録である。