「中野君、今年いっぱいで君との契約は解除させてもらうから」
頭髪の薄れかかった課長にそう言い渡されたのは、これから寒くなる兆候たっぷりな11月の某日のことだった
「ちょ、ちょっと待ってください。それは非常に困ります」
それはつまりあと一ヶ月ちょっとで職を失うという事を意味していた
「まあこれも上の決定だから。今年のうちの業績が悪くてね。切るなら派遣からってことになったんだ」
すまんね。と言って一応申し訳なさそうに頭を下げる課長
あっ、風で薄毛の頭髪がなびいてる
私は絶望的なこの瞬間でも、そんな間抜けな光景しか目に入らなかった
差し迫ったこれからの生活とか、次の就職先とか、考えなきゃいけないことは山程あるのに、私の目に入ったのは薄毛の頭髪だった
「分かりました。。業績が悪くて打ち切られるなら仕方ないです」
私は不当な契約解除も、仕方がないと受け入れるしかなかった