恋心はシェアできない

「それはどうかな」

「え?」

「俺にとってこの二年、皆んなと暮らせてほんとに楽しかったし、三人には助けられてたから。特に咲希には」

「私?」

彼がコーヒーを傾けながら私と視線を合わせる。


「俺が営業しやすいように資料揃えて机に置いておいてくれたり、俺が風邪引いたときはハチミツのど飴置いてくれてたり。あれ、誰に聞いても知らないって言われたけど咲希だろ?」

「知らないけど……」

「他にもさ、事務所の備品の補充とか、植木の水やりとかさ、誰がやってもいい仕事ほど皆やらないのに咲希はやってるじゃん。仕事する上で咲希のひたむきさってすごい魅力だと思う」

「……だから、違うって……」

碧生の言葉が素直に受け取れない。異動の話がショックだったのと改めて同期としてこんな風に、今までありがとう、これからも頑張って、的な話をされると急に心が苦しくなった。

「ほんと意地っ張りなとこだけは直さないとな。てかもう一回聞くけど、じゃあ社内の誰が俺のことサポートしてくれてたわけ?」

「碧生ならいくらでもいるでしょ……ま、松田さんとか」

「え? 松田さん? なんであの子の話がでてくんの?」


碧生が眉を寄せるのを見て、しまったと思うが、もう遅い。

「だってあの子、碧生に告白したらしいじゃん。お似合いだよね~。やるな〜」

馬鹿みたいに少しおどけた口調の私に碧生の表情が明らかに曇る。